敵討



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復讐は虚しくて哀しいか

身内が惨殺されるという事態に陥れば、現代でもその加害者に対して復讐を遂げたいとする意志を持つ人は多いし、世間一般も復讐という思いに対しては同情的であるのは、殺人犯に対する死刑判決には8割以上の人々が支持していることでもうかがえる。

封建武士社会では、復讐は即ち「敵討」と言われ、美風とされていたし、むしろ、敵討をしないことは、武士道にもとる行為と非難された。

しかし、実際問題として、所定の手続きを取り、敵討の旅に出たとしても、仇に会える確立は極めて低く、更に、実際に敵討成就は、難しかったといわれる。

本書が題材にした敵討は二つある。

一つは、剣客の伯父を闇討ちによって、又、その伯父の敵討に出た父を返り討ちによって殺された男が、江戸から長崎まで足を伸ばし、実に8年の年月の苦心の末に敵討を果たした一件である。しかし、この苦難の敵討の間に心と体はすさみ、敵討成就後は抜け殻のようになって、梅毒で死んだ。

もう、一件は法治国家となった明治の時代に、江戸時代末期に、父母を目の前で惨殺された当時14歳の男が、13年の苦難の末、当時判事となっていた犯人を殺害した「最後の仇討」である。

江戸時代の美風であっても、法治国家では殺人でしかないこの行為に対して、明治政府がどのように対処したか、或いは一般の市井の人々はどのように反応したか。

何時もの吉村節調の淡々とした事実描写が、却って、仇討ちという復讐行為の虚しさにぴったりだ。



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