敵対水域―ソ連原潜浮上せず (文春文庫)



敵対水域―ソ連原潜浮上せず (文春文庫)
敵対水域―ソ連原潜浮上せず (文春文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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危機への対応力は管理職の資質に依存する

 実は、ソ連原子力潜水艦K-19の事故の本と間違って本書を購入した。K-19はソ連初の潜水艦発射弾道ミサイルを搭載した原潜であり、航海中に原子炉の冷却水漏れ事故が起きている。原子炉の中で修復作業を実施し原子炉暴走を食い止めている。
 本書のK-219もアメリカ沿岸での航海中にミサイルハッチからの浸水、そして原子炉へ制御棒が降りなくなり原子炉暴走の危機に襲われる。最後には原子炉へ乗組員が入り、制御棒を手動で下ろすという危険な最後の手段を取っている。

 この手の本は大概西側から出るが、ロシア側から出ており、乗組員や当時の関係者、報道を十分に吟味しているらしく臨場感溢れる、逆に言えば心臓に悪い位緊張感が伝わってくる。この様な極限状態で、責任者である艦長がどの様な行動を取るか、また最後にどうしたかを知れば、読み手に感銘を与えるだろう。
 前述のようにソ連視点なので、ソ連内部だけでなく、あっと驚く米軍の極悪非道な行動も色々記載している。

 色々書いたが、軍ヲタだけでなく、現代の経営者、管理職こそ読むべき本だろう。
ウーラー、ブリタノフ!

ノンフィクションという部分にそそられて購読したが、
その内容のあまりの妙に、「実はただの創作では?」と、何度も疑ったほど。
それ程、本書は面白く、読み応えがある。

そして、潜水艦乗りという者が、如何に過酷で、重大な責務を負っているかを、
本書を通じて知ることが出来た。

彼らの敵は、敵国の潜水艦や、軍人だけではない。
海も勿論、守るべき故国にすらいるのだ。

整備もろくにされない旧式潜水艦。
過密なスケジュール。現場を知らずに、ただ命ずる上官連中・・・・
まさに、八方塞がり、四面楚歌の状態ですらも、彼らは潜水艦乗りとしての責務を果たそうとする。
自分なら、とっくの昔に投げ出していそうな状況だ。

その様な状況で下した艦長の判断は、本来、然るべきものである筈だったのだが・・・・

その先がどうなるのか?
一度読み出すと、もう、他のことは、恐らく手につかないくらい、面白い。
少しでも気になった方は、是非、読んでみて欲しい。

ドキュメントのようなサスペンス、サスペンスのようなドキュメント

現場の潜水艦乗りと米ソの政治家の動きがつぶさに見えるリアリティがすごい。小説ではあるものの、当事者に綿密にインタービューを行って書かれているので、ソ連ミサイル原潜K-219の事故前後に関するドキュメンタリーのように読めます。それでいて手に汗握るサスペンスとしても大いに楽しめる。翻訳の質が素晴らしい。
『人間も捨てたもんじゃない』と認識せてくれる一冊

1986年、バミューダ沖で火災事故を起こして沈没したソ連ミサイル原潜K−219のドキュメント。アメリカの新鋭原潜に比べると故障だらけのおもちゃのような潜水艦で立ち向かうK-219の乗組員。沈没、有毒ガスの充満、原子炉の暴走、と次々に危機に見舞われていく中で部下や仲間を救う為に自らの命を当然のごとく捧げる乗組員の姿には人間の美しい部分を見せられた気がします。

特に原子炉の暴走を食い止める為に、火災の中を制御棒を手動で下ろしに単身制御室へ乗り込んだプレミーニンが仲間の元に戻る寸前で力尽きる箇所は何度読んでも涙なしには読めません。

自分の保身の事ばかりを考えるソ連首脳部や原潜の事故という状況の中で乗組員達の自己犠牲の物語が進行しているというのは何とも皮肉な気がしますが、『人間も捨てたもんじゃない』と認識させてくれる一冊です。
ココム違反事件の背景が。

1980年代初頭に東芝機械の9軸竪型旋盤が当時のソ連に2軸の旋盤と偽って輸出され、原潜スクリューの加工に活用され、消音の成果が著しいものだった。この事件のK219は1970年代の旧型原潜で騒々しくアメリカの探知も容易なものだったことが分かるが、事件の中でもソ連の最新鋭原潜ヴィクター級はアメリカのオーガスタの探知をうまくかいくぐれるレベルにまで達している。この事件を契機に東芝機械のココム違反が表面化、日本にとっての大事件に発展することになる(当然アメリカも知っていて、それまでは泳がせていただけなのだろうが・・。この事件で犯人を作り責任を転嫁しなければならなかったからだろう)。
まあ、そんなことは番外編で、本は緊迫感に満ちた一気に読ませるドキュメンタリーノベルとして水準が非常に高い。翻訳が優れていると感じる。



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